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1997年4月2日号 今は無きFOCUS |
ヘールボップ彗星が世間をにぎわしている頃、一通の電子メールが届きました。FOCUS編集部から取材の依頼でした。当初、あのFOCUSが何でこんな所に来るのか半信半疑でしたが、遠路はるばる東京から飛行機で徳島入りをし、ここ海南町までやってきました。あいにく満月の月まわりでしたが、好天に恵まれ雰囲気の出る写真を撮って帰りました。その時の記事がページ中綴じのカラー見開きで掲載された時には正直驚いてしまいました。 |
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(上の写真の左端が私で、ドーム下の人物は橋本氏です)
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今世紀最大「ヘールボップ彗星」大接近の人気 |
ただ今、とても手が届かない「大スター」相手に、寝る間を惜しんで「追っかけ」をするマニアが急増中。何の話かといえば「ヘールボップ彗星」である。カネやオンナといった地上の雑事にしか興味がない向きには、地球から何億キロも離れたまさに雲の上の出来事。なあ〜んも関心がないかもしれないが、天文少年(とそれがそのまま大人になった人たち)は、今世紀最後の大事件と大騒ぎだ。
ヘールボップの「大スター」ぶりは、国立天文台から巷の天文少中年までが、無数に開設したインターネット・ホームページに詳しい。とにかくデカイものらしいのだ。一昨年7月、アメリカのアマチュア天文家ヘールさんとボップさんが同時に発見した時、彗星と大陽までの距離は7天文単位(地球と太陽の平均距離約1億5000万キロの7倍)。その頃、すでに11等星の明るさ、つまりは、あのハレー彗星の100倍も明るいということ。彗星の正体は、表面に塵がついた「汚れた雪玉しに喩えられる。太陽に近づくにつれ、表面から溶け出すのだが、ヘールボップは遠く4天文単位にある時点で、毎秒3トンもの水を噴き出していた。これは、例の「百武彗星」が昨年地球に最接近し、大きな尾を見せていた頃に等しい。あれやこれや計算すると、この彗星は1729年に現れた彗星に次ぐ史上第2位の明るさで、直径は約40キロにも達するという。4月1日、そのヘールボップは、彗星が一番光り輝くという近日点を通過する(太陽に最接近する)。そして次に戻って来るのは2500年後というのだから、「追っかけ」にも熱が入るというものだ。
徳島県南部、海南町にその名も「海南天女台」という施設がある。地域の天文ファンが私費で作り上げたもので、20センチの反射望遠鏡から電気コタツまで、彗星観測グッズを完備、しかし、もうヘールボップは上の写真のように普通の双眼鏡やカメラでも十分観測することができる。2月までは未明の北東の空に見えるだけだったが、3月に入ると、ご覧のように日没後、北西の方向にも現れるようになった。天文台の「事務局長」丸岡一洋さん(38)は、パソコン関連の販売会社を経営。13歳の頃から天体写真の撮影に魅せられ、ユーミンの曲にも登場する「ジャコビ二流星雨」をきっかけに彗星マニアに。自宅のベランダにも屋根が開閉する観測小屋を作り、感度の良い新兵器「冷却CCDカメラ」を得意のパソコンで遠隔操作、真冬の深夜・早朝でも「パジャマ観測」を続けている。「私にとってのほうき星は"時の記録者"と言っていいでしょう」。彗星の写真を見返すと、その時々の自分がよみがえるという。
丸岡さんは、「彗星を見るのが難しい都会人のために」と、海南で撮影したヘールボップの写真を次々ホームページに掲載、数ある彗星ページの中でも人気サイトの一つになっている。確かに、こと彗星に関しては都会人は損をしている。東京・池袋の超高層ヒルサンシャイン・シティのプラネタリウムではヘールボップの特別展を開催、彗星の正体を分かり易く展示している。20日未明には、「百武彗星」の発見者・百武裕司さんの解説の下、地上240メートルの屋上展望台でヘールボップ観望全を開催したが、厚い雲にさえぎられて見事空振り。たとえ快晴でも、汚れた空気の層を通しては、彗星らしい美しい尾の観測は至難なのだ。昨年から鹿児島県姶良町の町立天文台館長を務めている百武さん曰く「空の汚いところには来たくない」。下左端の写真は、北海道・小樽の町の灯と漁り火の上に現れた未明のヘールボップ。こういう明かりはいい舞台装置なのだが、東京の場合、空が汚い上に明る過ぎるのも問題。「戦争じゃないけれど、たまには灯火管制をやってもいいじゃないか。子どもたちにはプラネタリウムだけじゃなく、本物の彗星を見せたい」と百武さん。4月1日の近日点を前に、この考えに共感するオトナはどれだけ現れるか・・・
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